アップルが、8年ほど前に、中国でiPadの商標権をめぐり訴訟に巻き込まれ、48憶円の和解金を支払ったニュースをご存知でしょうか。
商標権に48憶円という高額の和解金を支払ったことで当時は大きな話題となりましたが、商標権の問題は、自社製品を販売できなくなるという問題も引き起こすためとても重要なものです。
最近でもインドで個人が「PS5」が商標登録されているため、インドで「プレイステーション5」の発売が危ぶまれています。
参考:「「PS5」インドで販売できない? 「個人が商標登録」報道、サイトに発売日掲載なし」
外国における商標戦略を誤ると、外国で商品を販売できない状況に陥ることもあり、あらかじめしっかりと商標戦略を取ることが重要です。
特に本家の商標を大量に出願しやすい中国ではなおさらです。
参考:「中国商標のパクリ問題はなぜ起こるのか!?理由と対策をプロが解説」
そこで本内容では、中国における「ipad」「iphone」の商標権問題を事例として失敗しないための商標戦略を解説していきます。
本内容の構成
1.中国のiPad・iphone商標権問題とは!?
2.中国のiPad・iphone商標権問題から学ぶべき5つの商標戦略
3.中国のiPad・iphone商標権問題のまとめ
1.中国のiPad・iphone商標権問題とは!?
中国でのアップルのiPadとiphoneの商標権問題を簡単にまとめると以下のとおり。
ポイント
ipad問題➤中国企業が「iPad」をすでに商標登録しており、アップル社は中国で「iPad」の販売を差し止められていた問題(最終的にアップル社が48億円を支払うことで和解)
iphone問題➤中国企業がケースなどの皮革製品を指定商品として「iphone」を商標登録しており、アップル社は中国企業に商標の使用停止を求めたが敗訴した問題
両問題は本質的に異なる点に注意してください。
ipad問題は、中国企業が携帯端末を指定商品として「ipad」を先取り出願し、「ipad」が商標登録されたことが原因である問題です。
これにより、アップル社は中国で「iphone」の販売ができないという問題が起きました。
iphone問題は、中国企業が携帯ケースなどの皮革製品を指定商品として「iphone」を抜け駆け出願し、「iphone」が商標登録されたことが原因である問題です。
携帯ケースに「IPHONE®」の商標を使用して販売しているのでユーザはアップル社の製品であると混合しやすいです。
そして、同一の商標を中国企業が使用して、品質の悪い商品を販売すると、アップル社のブランドに傷がつきます。
いずれにおいてもやっかいな問題です。
特に中国では、海外で著名な周知商標を不正の目的で商標登録することはできないという規定がないため、こうした問題は中国で特に起きやすいです。
このように、中国企業に商標権を先取り出願されたり、抜け駆け出願されてしまうと、中国で商品を販売できなくなったり、自社のブランドに傷がつき信用度が下がるといった問題がおきてしまいます。
では、このような問題が起きないためにどうすべきか以下に解説していきます。
2.中国のiPad・iphone商標権問題から学ぶべき4つの商標戦略
4つの商標戦略は以下のとおり
①中国でビジネスを始めるなら商標登録出願は早めにすること
②指定商品と役務は広くカバーすること
③商標と混同しやすい文字やロゴも出願しておくこと
④すでに先取り出願をしている場合は異議申し立てをすること
順番に解説していきます。
①中国でビジネスを始めるなら商標登録出願は早めにすること
商標権は早い者勝ちです。
先取りされないようにまずは早めに商標登録出願をすることをおすすめします。
特に、自国で著名になった商標は中国で先取りされやすい傾向にありますので注意してください。
まだ中国でビジネスを始めなくてもあらかじめ中国で商標登録をしていてもよいでしょう。
商標登録にかかる費用は1区分当たり出願手数料が4,665円でして、登録納付料は不要です。
日本よりも安めに設定されていますし、特許庁による補助制度もあります。
費用については詳しくは「中国商標登録の費用はどれくらい?安くできるコツは?プロが解説」の記事でも解説しています。
②指定商品と役務は広くカバーすること
iphone問題では、アップル社が指定商品と役務を広くカバーしていないことが原因でした。
これに対し、中国では登録商標であっても、指定商品や役務からはずれたものについて商標登録出願してくる可能性が高いので注意してください。
この問題に対応するために、実際に使用していない商品・役務についても広く指定しておくことをおすすめします。
その分区分が増えることで費用も大きくなりますが、区分1つあたり出願手数料は4,665円なので日本よりも手数料は安く設定されています。
商品と役務の指定は代理人にも相談してしっかりと検討することをおすすめします。
③商標と混同しやすい文字やロゴも出願しておくこと
あなたの商標を登録できても、あなたの商標と似た文字・ロゴを使用してくれる可能性もあります。
例えば、スターバックスは中国では「星巴克(シンバークー)」という名称で展開していますが、スターバックスは「星巴克」だけでなく、発音の近い「辛巴克」、文字の外観が似ている「三巴克」なども商標登録しています。
中国は特にパクリ問題が顕著であり、これに対する法整備も十分とはいえないため、商標と似ているものも登録しておくなどあらかじめ対策をたてておくことをおすすめします。
④すでに先取り出願をしている場合は異議申し立てをすること
もし、あなたの商標と同一・類似のものがすでに先取り出願している場合、異議申し立てをすることをおすすめします。
異議申し立てができる期間は日本とは大きく異なるので注意してください。
中国では、実体審査のあとに拒絶理由を有しないと判断された場合、出願公告されます。
出願公告の日から3か月の間に異議申し立てを請求することができます。
商標登録を取り消すための拒絶理由ですが、他人の影響力のある商標を不正な手段で登録していること(第31条)を理由として異議申し立てをすることをおすすめします。
BrandAgentでは日本弁理士と中国弁理士が連携してあなたの商標を守りますのでぜひご相談いただければと思います。
お問合せは「BrandAgent公式サイトのお問合せ」までお願いします。
3.中国のiPad・iphone商標権問題のまとめ
中国のiPad・iphone商標権問題から学ぶべき4つの商標戦略は以下のとおり
①中国でビジネスを始めるなら商標登録出願は早めにすること
②指定商品と役務は広くカバーすること
③商標と混同しやすい文字やロゴも出願しておくこと
④すでに先取り出願をしている場合は異議申し立てをすること
まずは中国商標登録出願をすませておくことです。