日本の登録商標が中国でパクられて商標登録されている問題が相次いでいます。
「無印良品」の中国商標の訴訟問題を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
訴訟では、なんと偽物が本家に勝訴しています。
>>「無印良品」の商標訴訟、良品計画が敗訴 中国」(AFP BB NEWS)」
無印良品の中国商標訴訟問題はそもそもなぜ起きたのでしょうか。
この原因とこのような訴訟問題が起きらないようにするための対策を知ることが今後中国で商標問題の損害リスクを抑えるためにとても重要です。
そこで本内容では無印良品の中国商標訴訟問題が起きた背景とその対策として学ぶべきことを5つお話ししていきます。
結論から言うと学ぶべきことは以下のとおり。
①中国商標登録出願をしておくことが重要
②商品・役務とその区分は広い範囲で指定すること
③同一・類似の商標を見つけた場合は異議申立てを行うこと
商標権は早いもの勝ちでして、お早めに手をつけておくことが重要です。
本内容の構成
1.無印良品の中国商標訴訟問題が起きた背景と結果
2.無印良品の中国商標訴訟問題から学ぶべき3つのこと
3.無印良品の中国商標訴訟問題のまとめ
1.無印良品の中国商標訴訟問題が起きた背景と結果
無印良品の中国商標訴訟問題を簡単に説明すると「偽物が本家を相手に商標権侵害を訴えた結果、裁判で勝訴を勝ち取った」というものです。
通常、考えられない問題ですがなぜ中国でこのような問題が起きたのでしょうか。
問題を時系列的に上の図にまとめました。
ポイントは以下のとおり。
ポイント
①中国の企業が24類の一部の商品について「无印良品」の商標登録をした
②①のために、無印良品は24類の一部の商品について「无印良品」の商標登録ができなかった
③無印良品は24類の一部の商品について商標「无印良品」を使用した
④商標登録をした中国の企業が侵害品として無印良品を相手に訴訟を起こした
⑤訴訟の結果、無印良品は約1,000万円の損害賠償の支払いと、24類の一部の商品について商標「无印良品」の使用を差し止められた
ちなみに、「商標登録権者」である「北京無印良品」で販売されているタオルなどの商品は、一度洗濯すれば使い物にならない程の低級品らしく、本物の「無印良品」ではないと知っていれば、決して買うことはないようなものだそうです。
こうした商標の先取り問題は、本家だけでなく、そのブランドを見て購入を決めようと考えるユーザにも被害を被ります。
とはいえ、商標権は早い者勝ちであるという制度であるため、こうしたパクリ問題の損害の発生は残念ながら今後も起きうることが予想されます。
日本の場合、偽物が仮に本家の商標を登録をしても、取り消すことができます。
というのも、日本の商標制度では、日本国内外で著名な商標と同一・類似の商標であって、不正目的で使用する商標は登録することができないという項目があるからです。(日本商標法4条1項19号)
しかし、中国の場合、この項目に相当するものがないことに注意してください。
中国では、中国内で著名な商標は登録することができないという項目がありますが(中国商標法13条1項・2項)、この項目では登録できない商標は、中国国内で著名なものに限られています。
そのため、あなたが中国でビジネスをはじめる時はあなた自身で商標対策をする必要があります。
2.無印良品の中国商標訴訟問題から学ぶべき3つのこと
学ぶべきことは以下の3つです。
①中国商標登録出願をしておくことが重要
②商品・役務とその区分は広い範囲で指定すること
③同一・類似の商標を見つけた場合は異議申立てを行うこと
順番に解説します。
①中国商標登録出願をしておくことが重要
商標登録は早い者勝ちです。
何度も繰り返しますがとても重要です。
偽物に先に出願されるよりも早めに商標登録をしておきましょう。
2019年度の中国の商標出願件数は780万件ほどでして、1日に2万件ほど出願されていることになります。
1日でも早く出願することをおすすめします。
実は、中国商標登録出願は費用がそれほどかかりませんし、迷ったらすぐ出願したほうがよいでしょう。
出願費用は1区分あたり約4,000円ほどでして、登録納付料は¥0、更新手数料は¥7,500ほどです。
また、中小企業である場合には特許庁により半額補助してもらえる制度もあります。
費用と補助制度については「中国商標登録の費用はどれくらい?安くできるコツは?プロが解説」の記事でも詳しく書いていますのでご参考に。
②商品・役務とその区分は広い範囲で指定すること
区分と商品・役務は広くとっておきましょう。
無印良品のケースでは、24類の一部について商標登録をしていないことが大きな損害を引き起こしました。
現在使用していない商品・サービスでも今後使用する可能性が少しでもあるなら指定しておくことをおすすめします。
区分が増額しても、出願にかかる1区分あたりの増額は4,000円ほどですし、登録納付料は0です。
費用がそれほど負担になるということはないので、日本よりも広めにとっておくことをおすすめします。
③同一・類似の商標を見つけた場合は異議申立てを行うこと
もし、すでにあなたの商標と同一・類似の商標を見つけた場合は異議申し立てを行うことをおすすめします。
異議申し立ては出願公告から3か月以内にすることができます。
申し立ての理由は、中国商標法31条の項目「他人の影響力のある商標を不正な手段で登録していること」を理由とすることがおすすめです。
異議申し立てについて詳しくは「中国商標のパクリ問題はなぜ起こるのか!?理由と対策をプロが解説」の記事でも紹介していますので参考になるでしょう。
取り消し理由については中国弁理士を含めてしっかりと相談してから請求することをおすすめします。
中国弁理士にダイレクトに依頼することも考えられますが、日本弁理士を介して依頼した方がコミュニケーションも円滑にとれておすすめです。
BrandAgentでは日本弁理士と中国弁理士が連携してあなたの商標を守りますのでぜひご相談いただければと思います。
3.無印良品の中国商標訴訟問題のまとめ
無印良品の中国商標訴訟問題が学ぶべきことは以下のとおり。
①中国商標登録出願をしておくことが重要
②商品・役務とその区分は広い範囲で指定すること
③同一・類似の商標を見つけた場合は異議申立てを行うこと
商標権は早いもの勝ちです。
2019年度の中国への商標登録出願の件数は約783万件。
これは1日に換算すると毎日約2万件出願されている、ということになります。
たった1日延びただけであなたの商標がすでに登録されてしまうリスクを負うことになります。
中国商標登録はすぐに出願することが重要ですので迷ったらすぐにご相談・お見積りをすることをおすすめします!