日本の商標制度は、1出願多区分制度をとります。
つまり、複数の区分をまとめて1つの出願とすることができます。
区分って何?という方は「商標の区分とは!?意味と簡単に調べられるコツをプロが徹底解説」の記事をご参考に。
これにより、複数の区分をそれぞれ別出願とする場合に比べてコストを安くすることができます。
>>参考「特許庁への手数料(出願手数料)の違い」
まとめて1つの出願とする場合 | 別出願とする場合 | |
2区分 | ¥20,600 | ¥24,000 |
3区分 | ¥29,200 | ¥36,000 |
>>※登録納付料は同じ。
>>※弁理士に依頼する場合、弁理士手数料にも差がでてくることが多い
このため、ほとんどのケースでまとめて1つの出願としますが、実は別出願とすることのメリットもあります。
そこで本内容では商標の区分が複数あるときに別出願することのメリットを解説します。
本内容の構成
1.商標の区分が複数あるときに別出願するメリット
2.別出願する場合の注意点
3.商標の区分が複数あるときの別出願のまとめ
1.商標の区分が複数あるときに別出願するメリット
別出願するメリットは以下のとおりです。
①審査が早くなるやすい
②登録しやすくなる
③更新するときに手間がかかりにくい
④譲渡しやすい
⑤早期審査・ファストトラック審査の申請が通りやすい
⑥単純に権利の数が増える
順番に解説します。
①審査が早くなりやすい
まず審査が早くなりやすくなります。
複数の区分(例えば、第15類と第34類)を1つの出願にまとめた場合、審査官は、まず第15類の審査部門で処理してから第34類の審査部門で処理といった感じで、複数の審査部門で審査の処理をする必要があり、審査が長くなります。
これに対し、1つの区分で別出願をすると、審査官は、1つの出願に対し審査部門の数は1つでよく、審査の時間も早くなります。
②登録しやすくなる
次に登録しやすくなります。
複数の区分(例えば、第15類と第34類)を1つの出願にまとめた場合、審査の結果、どちらか一方の区分(例えば第15類)は登録できても、他方の区分(第34類)に拒絶理由があれば、拒絶理由が通知されます。拒絶理由が解消されない場合、登録できる第15類についても1つの出願としてまとめているため登録することができません。
これに対し、1つの区分で別出願をすると、15類は登録査定が通知され、34類は拒絶理由が通知されるため、少なくとも一方は登録できることになり、登録しやすくなります。
③更新するときに手間がかかりにくい
複数の区分(例えば、第15類と第34類)を1つの出願にまとめて登録できた場合、5年後(分割納付)または10年後(一括納付)に更新する必要があります。
ここで、複数の区分のうち、一方の区分について使用しないケースもでてきます。
この場合、分割納付、一括納付のいずれにおいても使用しない区分を削除する手続きをしなければならず手間がかかります。
これに対し、1つの区分で別出願をすると、使用しない区分については放棄(放置)すればOKのため面倒な手続きは不要となります。
④譲渡しやすい
また、複数の区分を別出願した場合、商標権を譲渡しやすくなります。
これは特に承継人が複数いる場合などに顕著となります。
例えば、承継人が複数いて、一方の区分を承継人Aに、他方の区分を承継人Bに承継する場合、それぞれは別々の商標権ですから譲渡しやすくなります。
⑤単純に権利の数が増える
単純に権利の数が増えますので、商標権の数のアピールなどにつながります。
以上のとおり、別出願することのメリットは大きいといえます。
2.別出願する場合の注意点
逆に別出願するデメリットは費用ですが、¥3,400×(区分数)高くなります。
ただし、登録納付料は変わらないので意外とそれほど高くつきません。
ただし、弁理士手数料も高くなると思うので(交渉すれば下げてもらえるかもしれませんが…)、これらの費用増に見合っているかどうかを検討しながら別出願も検討することをおすすめします。
3.商標の区分が複数あるときの別出願のまとめ
①審査が早くなるやすい
②登録しやすくなる
③更新するときに手間がかかりにくい
④譲渡しやすい
⑤早期審査・ファストトラック審査の申請が通りやすい
⑥単純に権利の数が増える