「商標の使用の意思って何?
商第3条第1項柱書の要件を満たさないという拒絶理由が通知されたらどうすればよいの?
あとは通知されないためにどうしたらいいのかも知りたい。」
こうした疑問に答えます。
この記事を書いている人
・弁理士(特許事務所・TMI総合法律事務所・企業知財部出向)
・商標出願件数100件以上
・現在特許事務所BrandAgentの代表
先願商標と同一・類似でなければ商標は登録できると思っていませんか。
審査は類似性の判断だけではありません。
本当に使用する意思があるの?と審査官から疑われると登録ができないため注意が必要です。
そこで本内容では以下の構成で「商標の使用の意思」について解説します。
本内容の構成
1.商標の使用の意思とは?
2.商標の使用の意思の証明書の書き方
3.商標の使用の意思があることの疑いを避けるためには?
本内容のまとめ
① 1つの区分に対し、指定商品(役務)の数が20以上の場合、商標の使用の意思の疑義が審査官から通知されることが多い
② 疑義が通知された場合、指定商品(役務)の数を減らす補正をするか、商標の使用の意思の証明書を提出する必要がある
③ 疑義が通知されないために、無駄に指定商品(役務)の数を増やさないことが重要
1.商標の使用の意思とは
商標の使用の意思とは、登録を受けようとする商標を使用する意思があることです。
商標法では、登録の要件に使用の意思があることがあげられています。
商標法第3条第1項柱書
自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
使用の意思は、出願時に使用していなくてもOKです。
商標の使用の意思の証明書は、出願時に提出する必要がありません。
審査の過程で、審査官から「ほんとうに使用するのか?」と疑義が通知された場合に、提出する必要があります。
では、審査官は審査の過程で、どのようなものを基準として、疑義を生じるのか。
以下に解説します。
2.商標の使用の意思に疑義が生じるケースとは
商標の使用の意思に疑義が生じるケースは以下のとおり。
原則として、1区分内において、23以上の類似群コード(以下「類似群」という。)にわたる商品又は役務を指定している場合には、商品又は役務の指定が広い範囲に及んでいるため、指定商品又は指定役務について商標の使用及び使用の意思があることに疑義があるものとして、商標の使用又は使用の意思の確認を行う。
引用:https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shutugan/ryui/document/shitei_chui/41_100_03.pdf
複雑なので、経験的にわかりやすくまとめます。
1つの区分に対し、指定商品(役務)の数が20以上の場合、商標の使用の意思の疑義が審査官から通知されることが多いです。
このため、あなたが不要に拒絶理由をもらいたくないのであれば、出願時に指定商品(役務)の数をしぼりこんでおくことをおすすめします。
証明書の提出は、あなたが代理人を利用する場合でもやっかいなものとなります。
では、あなたが審査官から、商標の使用の意思について疑義を通知された場合、どうすべきか。
以下に解説します。
3.商標の使用の意思について疑義を通知された場合の対応
商標の使用の意思について疑義を通知された場合の対応は以下のとおり。
①指定商品・役務の一部を削除する
②商標の使用の意思の証明書を提出する
証明書の提出が困難の場合、指定商品・役務の一部を削除する補正を行います。
ここでは証明書について解説します。
証明書として必要なものは以下のとおり。
・取り扱い商品が記載されたカタログ、ちらしなどの印刷物
・取り扱い商品がわかる店内の写真
・取り扱い商品がわかる取引書類(注文伝票・納品書・請求書・領収書)
・取り扱い商品が紹介された新聞・雑誌・インターネットなどの記事
これらの証明書を揃えることが難しい場合は、使用の意思を明記した文書を提出します。
文書の雛形はこちらのサイト(別紙1,2)から手に入れることができます。
使用の意思の証明書は、疑義の通知から指定期間内に提出する必要があります。
4.商標の使用の意思のまとめ
① 1つの区分に対し、指定商品(役務)の数が20以上の場合、商標の使用の意思の疑義が審査官から通知されることが多い
② 疑義が通知された場合、指定商品(役務)の数を減らす補正をするか、商標の使用の意思の証明書を提出する必要がある
③ 疑義が通知されないために、無駄に指定商品(役務)の数を増やさないことが重要